純粋無垢なキジムナーの明るく一生懸命な姿が、
大切な人を守る力、生きる強さ、そして未来を切り開く力に繋がっていく…感動の物語。
[初演:2018年]
自分の使命まで忘れて人間のために命を賭ける、青鬼のゲン。鬼の小づちは不思議な小づち 悪い人間叩いたならば たちまち角生え鬼となる…
[初演:1986年]
家族・友達に感謝を伝えたくなる。戒めでも怒りでもない…、あやの人を思う優しさが、大切なものを見失ってしまった人々の心を溶かしてゆく。
[初演:1982年]
心やさしい河童“ラーム”の奮闘劇。本当の優しさに気づいたとき、美しい笛の音が鳴り響きます…。
[初演:1983年]
人魚の海
北の海に住む人魚は、元は人間でした。嵐の海で竜王に助けられた娘は人魚となり、やがて竜王の妻となって、海の底で、かわいらしい人魚の女の子を産みました。人魚は我が子を人間の世界で育てたいと強く思います。『暗く冷たい海の底ではなく、あたたかく華やかな人間の町で育ってほしい。優しく情のある人間の心にふれさせたい…』竜王はこの願いを聞き入れ、海亀の亀太郎・亀次郎をお付きに、娘・弥々を人間の世界へと送りました。ちょっと間抜けな亀太郎、お人好しの亀次郎の数々の奮闘で、弥々は人間の娘となり、海辺でろうそく屋を営む心優しい老夫婦に大切に大切に育てられます。
優しい老夫婦や町の人たちに愛され、楽しい日々が続き、弥々は本当に幸せでした。やがて美しく成長した弥々は、店のろうそくに絵を描き始めます。絵入りのろうそくは大いに売れ、たちまち評判になりました。…しかし、その噂を聞き付けた商人たちの魔の手が、権力者による理不尽な企みが、弥々に忍び寄ります。それを知った竜王の怒りによって、海は荒れ狂い、陸を覆いつくそうとします。
しかしその時、弥々は…。
雪女
雪深い山奥。雪女“お雪”は、手下の霰(あられ)霙(みぞれ)雹(ひょう)を従えて、山の秩序を乱す悪い人間をこらしめていました。ある日お雪は、吹雪の中で猟師の親子、吾作と弥助に出会います。吾作は雹の息で殺されてしまいますが、若くて目のきれいな青年弥助に、お雪は一目惚れしてしまいます。そして、「今日ここであった事は誰にも話さぬ」という約束をさせて、弥助を助けてしまうのです。
それからのお雪は、弥助のことばかり考えていました。雪山の番人としての仕事も忘れて……。「人間の娘となって弥助のもとへ行きたい……」お雪は、とうとう思いあまって雪の女神様のところへ相談に行きました。
女神「いったん人間になったら、二度と雪女には戻れぬぞ…それでもよいか」
お雪「はい、かまいません!」
女神「もし、弥助が約束をやぶってあの日のことを話したら、お前は溶けて水になってしまう。それでもか!」
お雪「はい!」
女神「わかった。それではお前を人間の娘にしてやろう」
お雪は、人間の娘になって弥助の前に現われます。そして二人は夫婦に。お雪は幸福でした。弥助は働き者のお雪を、とても優しく大事にしてくれました。
ところがある日、弥助が突然……。お雪はもう人間でいられません。雪女に戻るためには、氷柱(つらら)の槍で弥助の胸を突き刺して殺さねばなりません。しかし、お雪は……。
熱い涙をあふれさせ消えてゆく、雪女…お雪の物語。
鶴女房
昔、貧乏な家の若者が田を打っていたら、鶴が一羽とまった。その鶴は、体に矢を負うていて、これを取ってくれと云わんばかりに若者の方を見た。若者は田を打つのをやめて、矢を抜いてやった。そうしたら鶴はかがんで礼をして、嬉しそうにして飛び去った。
それから一日、二日たって、その貧乏な家へ綺麗な娘が一人来て、「おらをここの家の嫁にしてくれないか」と云う。「こんなところに嫁なんて、おれは一日日雇いに歩いて、やっと日を送っているんだ」と断ったが「それでもいいから、嫁にしてくれ」と云ってとうとう嫁になった。二、三日もたつと、嫁は「六尺四面の機場をあつらえてくれ」と頼んだ。若者は機屋を作ってやった。「おらの機を織ってる処を見てくれるな」と娘は、一機織った。それは錦やら何やら知らぬが、そこらで着るものでなかった。それは高くで売れた。若者はまた欲が出て、娘に「もう一機織ってくれ」と頼んだ。それで娘はまた織りだした。若者は決して機屋を覗かんという約束をとうとう我慢できなくて、小さな節穴から覗いて見ると、一羽の鶴が我が身の羽を抜いては織り、抜いては織りしていた。すると鶴は、若者が覗き見したのに気がついて「見るなと云ったのに見てしまったのですね」と云って、半分織りかけにしたまま飛んで行ってしまった。
おけさのひょう六
とんと昔、佐渡の国の相川の庄という所に、ひょう六という小作人がいた。
ひょう六は生まれつき畑仕事よりも歌や踊りが大好きだった。雨が降っても、風が吹いても、暑い時も寒い時も、朝から晩まで段々畑の畔の所で歌にあわせて踊っていた。それは村中の評判になって、いつの間にか島中から見物人が集まるようになった。ある日、島の殿様からお呼びがかかり、殿様の屋敷で踊り始めたひょう六だったが…。
ひょう六の踊りは理不尽な侍社会の横暴に対する風刺だった。それから殿様のひょう六の踊りに対する弾圧が始まった。
それでも踊ることをやめないひょう六、そしてついに…。
杜子春
杜子春は十五歳で両親を失い、多くの財産を引き継いだ。だが、人の良さに付け込まれ財産を騙し取られてしまった。
あっという間に一文無しとなり、洛陽の西の門の下でぼんやりと佇んでいた杜子春の目の前に、不思議な老人が現れる。老人は「お前の影が地に映ったら、その頭に当たる所を夜中に掘ってみるがいい。」と告げた。老人の言う通りにすると、土の中からたくさんの黄金が出てきて、杜子春は一日の内に洛陽の都でもただ一人という大金持ちになった。
贅沢三昧の暮らしを始めた杜子春だったが、数年も経つと、すっかり元の無一文になってしまう。西の門の下で佇んでいると、またも不思議な老人が現れた。「今度は、腹に当る所を...」 と、告げようとする老人をさえぎり、杜子春は言う。
「もうお金はいらないのです。贅沢に飽きたのではありません。人間というものに愛想が尽きたのです。私はあなたの弟子になって仙術の修業をしたいのです。どうか私を弟子にしてください。」
こうして杜子春は峨眉山の奥で厳しい修行に励むことになった。 喜・怒・哀・懼・悪・欲・愛 七情との戦いの果てに、杜子春が見たものとは…
怠け者の寝太郎は、年老いたおばばに働かせて、自分は毎日寝てばかりいるので、村中の鼻つまみ、子供達までが歌を歌って馬鹿にする始末でした。その日もまた、いろりばたでうつらうつら寝そべっていると、狸の権八がやって来て、『人間から絶えず迫害され、夜もおちおち眠れない、なんとかしてくれヨ 寝太郎どん!』とぼやき始めました。
そこへおばばが息せき切って帰って来て、寝太郎に何かを告げました。すると寝太郎は突然はね起きて、『うむむむ……今こそ時節到来じゃ!』と叫びました。さて一体何事が起こったのでしょうか?……強欲な庄屋と都からやってきた偉いお坊さん。そして、寝太郎の家に、祖先伝来かの木蓮上人様がくだしおかれた宝物とは?さて、怠け者の寝太郎が巻き起こす奇想天外な物語。はたして、どうなりますことやら……。